敷地は大通りから1本入った閑静な住宅街である。南側が道路に面し、他三方が建物と隣接しており、奥行きのある敷地である。周辺に対し馴染むように、白を基調としたシンプルな外観とした。庭を広く確保するため、建物を敷地の奥に配置した。奥に配置すると、隣接する建物から視線が注がれてしまう。そこで「味鋺の家」は、広がりのある空間を確保した自分たちだけの場所、「開放的なプライベート空間」を実現させることをコンセプトとした。
周囲からの視線を遮るために袖壁を設けている。これは、建物内からの眺めをコントロールするためでもある。南面の開口は、青々とした芝生の庭へと続く。リビングの幅4.3mの大窓は内と外との境界を曖昧にし、実際の広さ以上の開放感を与えている。リビングの天井は一部吹抜けを設けている。吹抜け上部南側には大きな窓を、北側には開閉可能な障子戸を設けている。昼間は、窓から太陽の光が燦々と降り注ぎ、夜になると障子戸が2階廊下の明かりを受け、まるで間接照明のようにリビングを優しく照らす。この吹抜けを光と風が通り抜け、お互いに独立した空間が繋がれていく。
リビング、ダイニングとオープンに繋がるキッチンでは、庭で遊ぶ子供たちを見ながら料理ができる。また、庭の向こうにはガレージがあり、リビングに居ながら愛車を眺めることができる。庭と道路を隔てるゲートは、敷地側に引き込んだ場所に設けることで、道行く人の視線を敷地奥まで誘う。ゲートから道路までの空間をオープンスペースとし、街並にゆとりを与え、子供たちの遊び場など、様々な用途に対応する地域のコミュニケーションの場となっている。ゲートにステンレス製のルーバーを用いることで閉鎖的な印象を与えることなく、適度にプライバシーが守られている。