周りを建物に囲まれた不利な条件
敷地は、都心環状線から少し入ったところ、路線防火のすぐ隣に位置し、商業地域で準防火地域内にあります。周りには、倉庫や、事務所ビルなど高い建物が数多くあり、家を建てる環境としては決して良いと言えません。夫婦2人、そして5歳と3歳の姉妹、4人家族のお家。敷地は間口6.0m奥行き14.5mという細長い形状。周囲3方に隣接建物が近接し、北面のみ接道しています。またその道路反対側には、事務所ビルが建ち並んでいます。
限られた敷地の中に最大限の広さと豊かさを実現
この不利な条件の揃った88㎡と限られた敷地の中に、どのようにして開放的で明るく豊かな生活空間をつくるのか考えました。狭い敷地に十分な居住空間を確保し上層から光を得るために木造3階建とし、2階に生活の中心となるLDKを配置。1Fに駐車スペースを確保するため、ピロティの構造には集成材の門型フレームを採用しています。北面は、事務所ビルからの視線を避けるため窓を設けずシンプルな外観とし。外壁がそのまま隣地境界となり、敷地をフルに活かし、室内に広々とした空間を確保しています。建物の東側には、南から順にバルコニー、階段室、サービスバルコニーを並べ、光と風が南から北へ抜けるようにしました。
アルミルーバーや壁で囲まれたバルコニーを通して、プライバシーを守りながら室内空間に光や風を採り込む工夫をしています。バルコニーの床をFRPグレーチングにすることで1階へも光と風を導きました。
周囲の影響を受けない都市型住宅の実現
厳しい周辺状況から、また商業地域であることも考慮し、将来環境の悪化に影響されない住宅を考えました。LDKには、2.40m、2.90m、5.15mと3つの天井高が存在しています。そして階段室と吹抜部分にはハイサイドに開口部を設けて、光と風をスムーズに空間の奥へと導くことができました。
大切な住居を近隣環境によってあきらめることなく都市型住宅の現実をなんとか打開する方向にこの住宅は考えられています。